古代美術 インタリオ 神の椅子 古代ローマ&古代ギリシャ

着座姿勢の神と女神について〜古代ローマ&古代ギリシャ〜

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王座に腰かける古代ギリシャの女神

古代世界において、着座姿勢の人物は王族の特性を持つ事を示していました。紀元前3世紀までに、シュメール人とエジプト人は王座に腰をかけた人物を神として表現してきました。そして、国王や専制君主もまた神と同様に王座に腰をかける形で表現されてきたのです(この人物たちは神の流れをくむか、神の生まれ変わりと考えられていました)。

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ローマ執政官の高位高官用の椅子

何世紀もの間、椅子によってその人物の位を示すスタイルは続き、例えばローマの執政官も高位高官用の椅子に座っていました。

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こちらはローマ皇帝の例。ローマ皇帝はもう高位高官用の椅子に座っていませんが、神のように王座に腰かけています。

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オリンポスの神々 (アクロポリス美術館)

ギリシャ人において、全ての神は同等ではなく、それぞれの神には階級がありました。

中心的な神々はクロノス一族出身の神々です。ゼウス、ポセイドン、ヘラ、デメテル、ハデスがこれに該当し、王座が与えられます。しかし、ギリシャの芸術作品でアポロン、アルテミス、サテュロス、ニンフ、バッカスが王座にいることはありません。その理由は、この神々が位の低い神々(ニンフとサテュロス)もしくは死を免れない母親から生まれた事が理由です。

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ヘレニズムの銀貨に描かれた王座に腰かけるポセイドンとアテナ

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王座に座るアテナ・ニケーフォロス

ただし、神の伝令役であり商業と医学に関係した神であるヘルメスは、ゼウスとタイタン族アトラス の娘マイアとの息子であり、王座に座る権利を与えられています。ゼウスとメーティス(ゼウスの最初の妻)との間に生まれた娘であるアテナも同様の扱いです。

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王座に座るフォルテュナとプディーキティア

ローマ人はこの考え方を少し変化させて取り入れました。最も偉大な神々のみに王座を与えたのです。すなわち、ジュピター、ネプチューン、ユノ (そしてユノに関係する女神プディーキティア)、ミネルヴァ、セレス(そしてセレスに関係する女神フォルテュナ)です。

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王座に座る パテラを持ったフォルテュナ

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左から 王座に座る パテラを持ったジュピター 笏は失われています。

中央 右 王座に座る パテラを持ったジュピター (右側の作品は最高のクオリティです)

ジュピターは王座に座る神々の中でも最も偉大な神です、王座に座るジュピターが笏とパテラ、足下に鷲を従えるのは古代ローマ1世紀〜2世紀にかけて最もポピュラーな基本のスタイルです。古代ローマのインタリオが好きな方は是非覚えておいてくださいね。

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王座に座り、勝利の女神ニケ 又は 稲妻を持つジュピター

Standing Bonus Eventus with patera

 収穫の神 ボヌス・エヴェントス パテラと麦を持っています。

位がそれほど高い神ではない場合は立ち姿で表現されます。

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パテラ 古代ローマ 3世紀
Paris, National Library, Cabinet des Médailles. 所蔵

パテラとは、神にワインを捧げるお皿のことです。

 

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腰かけるロマ ローマ時代のブロンズ製コイン

ロマなど、王族の中には腰かけているもののその場所が王座ではなく岩である場合がある。これはおそらく、その人物が高い階級にいない(位の高い神との違い)ことを示すためのものだと考えられます。

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腰掛けたマーキュリー 翼の生えた兜をかぶり、財布を持っています ブロンズ像

同様にジュピターの息子であるマーキュリーも( ヘルメスがゼウスの息子であったように)同様です。マーキュリーは神の伝達役で商業の神であり、彼は立っているか王座ではなく岩の上に座って表現されます、このことは彼の階級が父親よりやや低いことを明確に示していると考えられます。

 

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古代ローマ アメジスト インタリオ マーキュリー

 

コーネリアンやジャスパー、カルセドニーなどの固い石よりも、古代ローマ人にとってアメジストは遥かに希少で高価な石でした。

古代ローマのインタリオの約1パーセントのみがアメジストで出来ています、だいたいはインド産の石です。

さらに、水晶やシトリンのように結晶化されたアメジストは、アゲートのような石よりも彫刻が難しく、アメジストは腕の良い彫刻家のみに渡された石です。この時代の腕の良い彫刻家は、約一ヶ月をかけてこのようなインタリオ一つを仕上げていました。ですから、アメジストにはベストクオリティの彫刻のみが施されています、

今回の作品は、そういった意味で非常に良い例です。石の質、石の形 (Type C4),、石の磨き、題材、彫刻のスタイル、全てが1世紀初期のユリウス・クラウディウス朝を思わせます。

アメジストの流行は特に紀元前1世紀〜1世紀初期の間に高まったので、1世紀を過ぎてからはアメジストのインタリオを見つけるのが非常に難しくなります。

ですが、気をつけて下さいね。

沢山のアメジストインタリオが、ヘレニスティックや古代ローマのスタイルで彫られています。だいたい17世紀か18世紀の作品にそれらを見つける事ができます。専門家には本物の古代ローマのインタリオか17世紀か18世紀かの作品の見分けは簡単にできます。

ポイントとしては、、

だいたいの17世紀、18世紀のインタリオは古代ローマのものよりも大きいのが特徴です。(古代ローマではインタリオを主にリングへセットしていたこと忘れないでくださいね。)

また、古代ローマのアメジスト自体が17世紀、18世紀のアメジストとは質が違います(何故なら古代の鉱山は17世紀、18世紀には既に存在しないからです)

石のカッティングと石の磨き方、彫刻のスタイルも違います。特に18世紀のものは道具の跡が違います。

インタリオに彫り込まれている人物の衣服と髪型も違います(例えば、アウグスティス時代のインタリオには、長いひげをはやした男性のインタリオは見つける事は出来ないでしょう。)

アメジストのインタリオを見た場合は特に、このレッスンのことを思い出してみて下さい。

 

 

 

仙波亜希子 Akiko semba

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インタリオ 時を超えた小さな石に眠る広大な世界

インタリオ 時を超えた小さな石に眠る広大な世界

 

このレッスンで紹介するインタリオは全てギャラリーにて販売した作品です。

(23年間のキャリアを持つ古代美術のエキスパートのパートナーが発見し、販売した数百点におよぶインタリオの一部も紹介します…)

 

インタリオにはその小ささからは想像も出来ない広大な世界が広がっています。。。

ぜひ想像して下さい、、、

遙か彼方の紀元前に、インドやアラビアの山中で、つらく困難な作業を経て砂利石の中から宝石を見つけ出した人達の事を、、、ジャスパー、カルセドニー、ロッククリスタル、カーネリアン、ニコロ、瑪瑙、ラピスラズリ、シトリン、アメジストなどの宝石を、、、

インド・アラビアから、山、川、砂漠、海を越えて地中海へと至る長く危険な旅路をした宝石達を、シリアやトルコ、アレクサンドリアの作業場で受け取る宝石研磨職人を、、、

切りだされ磨き上げられた宝石達に、信心深く裕福な人々が、自分の名前であったり、かわいい動物や偉大な神の図柄、マジックシンボル、有名人の肖像、神話などの気に入った図柄の彫刻を施す事を彫刻職人に依頼することを、、、

 

ギリシャやローマの彫刻職人が古代の道具を用いながら、膨大な時間と労力をかけて彫刻を施し、宝石を《インタリオ》と呼ばれる極小の彫刻作品へ生まれ変わらせる事を、、、

インタリオの注文主達が彫刻が施されたインタリオを持ち、彫金職人の元を訪れ、インタリオをセットする指輪の形や金の重さ、装飾などについて相談する事を、、、

ギリシャやローマに生活している、位の高い人々、貴婦人達が、ジュエリーになったインタリオと共に旅をすることを、、、

このような人々が天に召された後、インタリオは墓の中や人知れぬ場所で、あるいは池や川の底で何世紀もの間、眠り続けてきた事を、、、

長い間眠ってきたインタリオが近代人の手によって、驚きと喜びとともに発見され、この 素晴らしい芸術品が世紀を越えてあなたの元へ届いたものである事を、、、

是非、強く想像してみて下さい。

 

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ミノスまたはミケーネ文明のバンデッドアゲート。三面に彫刻が施されています(紀元前14  12世紀)

 

インタリオ彫刻の起源は、まさに文明の開始である紀元前4千年にまで遡ります。文字の使用よりも以前にインタリオの彫刻は行われていたのです。最初期のインタリオ彫刻は貝殻や石(ステアタイト、方解石、大理石、ヘマタイト、ラピスラズリ、めのう、カルセドニー、コーネリアン)で作られ、印章として使われました。

インタリオには、幾何学模様やマジックシンボル、動物、文字(楔形文字や象形文字)、神や王、有名な人物の肖像、戦争や日常生活、神話をモチーフとした彫刻が施されました。

 

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ステアタイトにグリフィンが彫られた古代ギリシャのインタグリオ(紀元前7世紀?)

 

シュメール、バビロニア、エジプト、ミノス、ギリシャ、フェニキア、ペルシャ、エトルリア、ローマなど、あらゆる古代文明がインタリオのモチーフとなりました。インタリオの形状には、時代や流行によってデザインの変化が見られます。

シュメール人は円筒印章を好み、ミノス人は円盤型、両凸レンズ型、そして丸みを帯びた長方形で両端がすぼまった形を好みました。またバビロニア人やペルシャ人は円錐状の形を好みました。

エジプト人はスカラベを好み、フェニキア人やギリシャ人もスカラベを用いました。スカラベが用いられるようになったのは宝石用で、スカラベの指輪自体は紀元前2世紀初頭に作られています。

スカラベの後、ギリシャ人はスカラボイドを用いるようになります(形状はスカラベですが細部に人工的な技術を使用)。そして、スカラボイドはますます扁平・楕円状の形に変化していき、ヘレニズム期(紀元前4世紀)には通常のインタリオの形状が登場するのです。

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めのうのスカラボイドにケンタウロスが彫られたギリシャのインタリオ。紀元前500年頃。

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コーネリアンに兵士が彫られたイタリアのインタリオ。後期ア・グロボロ様式、紀元前3世紀

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イエローカルセドニーにが彫られたイタリアのインタリオ。後期ア・グロボロ様式、紀元前2世紀

ローマ時代のインタリオの魅力を理解するために6つのポイントをご説明します。

 

1真贋について

 

当然ながら最も重要なポイントになります。アートマーケットでは、ギリシャ時代やローマ時代のインタリオとして非常に多くの模造品が出回っています。中には、近代(とりわけ18世紀・19世紀)に造られた模造品もあります。専門家の場合は、石質やモチーフ、制作スタイルを調べ、彫刻に使われた道具の特徴や表面の劣化やパティナを仔細に観察することで、真贋は極めて容易に判断できます。

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コーネリアンに「シレノスの勝利」が彫られたイタリアのインタリオ。18世紀後期。石質と製作スタイルから、このインタリオが18世紀に作られた事がわかります、おそらく、当時の観光客向けに本物のヘレニズム期のインタリオとして売られたのだと思います。

 

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アメジストにアレクサンドロス大王が彫られたイタリアのインタリオ、18世紀。このインタリオはヘレニズム期のものに近いと言えます。

 

2時代

 

より貴重なインタリオはヘレニズム期(紀元前4世紀~1世紀)およびローマ時代アウグストゥス期(紀元前1世紀後期)のものです。紀元前1世紀から紀元1世紀にかけて、ローマのインタリオは最盛期を迎えました。

紀元150年頃から、製作スタイルに変化が現れ、彫刻の質もやや下がります、また、彫刻のモチーフも変化します。特に3世紀の「マジック インタリオ」には興味深い作品がいくつかあり、初期キリスト教をテーマにした作品(3世紀~4世紀)は貴重です。

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共和政ローマのバッカンテが彫られたバンデッドアゲートのインタリオ。紀元前2世紀~紀元前1世紀。

 

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コーネリアンにヴィクトリーが彫られた後期ヘレニズム期のインタリオ。紀元前150年~100

 

3保存状態

 

価値あるインタリオは目立った破損や欠損がなく、石灰化していません。保存状態に目立った破損や欠点などがある場合には価値が下がり、殆ど販売不可となります。ですが、コレクターの需要の見込めるような極めて希少な作品の場合は別です。

 

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アナトリアのTycheの寺院が彫られたローマのインタリオ。

紀元3世紀。このインタリオには目立つ傷が見られましたが大変貴重な作品であった為、有名なコレクターの方にお買い上げ頂きました。

 

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コーネリアンにPothosの姿が« vivas »の文字と共に彫られたローマのインタリオ。コーネリアンなのに何故赤くないかというと、火(あるいは酸化)によって石質が変化し、石に石灰化が起こっている為です。しかし、この石が興味深いのは、これが葬式用に製作されたものであり、火葬時に積み薪とともに焼かれたということがわかるからです。インタリオの価値としてはそれほど高くはありませんが、面白みのあるインタリオ作品として、お求めやすい価格でコレクターの方にお買い上げ頂きました。

 

4石の美しさ

 

半透明の美しいコーネリアンは、当然ながらグレーカルセドニーやオレンジ色のコーネリアンよりも貴重です。価値の低いものから並べると、ガラス、方解石、ジャスパー(赤、黄、茶)、グレーカルセドニー、オレンジ色のコーネリアン、ロッククリスタル、レッドコーネリアン、ガーネット、イエローカルセドニー、ブルーカルセドニー、めのう、アイアゲート、ニコロ、ラピス(ローマ時代のものには希少)、グリーンアゲート(緑石英)、シトリン(ローマ時代ローマ時代のものには非常に希少)、アメジスト

そして、石のサイズも重要です。小さすぎず、大きすぎずが大切になります。なぜなら小さすぎても価値が上がりにくく、大きな石の場合は彫刻作業が容易になるからです。

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ニコロ アゲートに幸運のシンボル(豊饒の角、鳥、方向舵、イルカ、蝶)が彫られた インタリオ。紀元1世紀初頭。

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  Venus Victrixが彫られたローマのインタリオ。紀元前1世紀~紀元1世紀

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アメジストにプトレマイオスが彫られたヘレニズム後期のインタリオ。紀元前1世紀初頭

 

モチーフ

 

インタリオには文字(名前や« vivas »など)、マジックシンボル、動物(牛、犬、馬、ライオン、ワシ)、神や人間の頭部などシンプルなモチーフ が用いられたものもあります。

女神フォルトゥナやアテナ、マーキュリー、マルス、ジュピター、« fede » (« junctio dextrarum »)などは、非常に一般的です。

立ち姿全体を表したものは、頭部のみのものより良いとされており、3つの図柄が入ったものは1つのものよりも価値があると考えられています。また、生活の情景を描いたものは単なる立ち姿の図柄のものより好ましいとされています。

他のモチーフよりも稀少であるのは、、、皇帝、​​ミューズ、神々(例えばバッカスがマルスよりも稀少で、ディアナはアテナよりも稀少、ヴェヌスはフォルトゥナよりも稀少)、コメディアンマスク、gryllos(グリロス)、サーカス マキシマス、田園風景の生活、ギリシャの英雄、トロイ戦争、サテュロスとニンフ、エロティックモチーフなどです。

 

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ローマ軍船に乗ったワシが彫られたジャスパーのローマのインタリオ。紀元2世紀。素晴らしいモチーフです。

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Silenus(シレノス)の仮面を被ったオウムを背負い、豊饒の角に配置されたgryllos(グリロス)のインタリオ。

非常に質の高いレッドコーネリアンが使用されています。紀元1世紀。大変素晴らしいモチーフです。

 

彫刻のクオリティ

 

個人的には、最も重要なポイントです。魅力的な構図、バランス、スッキリとして見やすい図柄、作りこまれたディテールなど…頭部のみのシンプルな肖像であっても、上質な彫刻が施されることで興味深い作品になります。一般的なマーキュリーの図柄も、良い石に特徴的な彫刻技法で制作することで、非常に魅力的なインタリオになるのです。

 

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大きなイエローカルセドニーにセレスのアートリビュートと共に彫られたニケのインタリオ、ヘレニズム後期。(15 x 18.5 mms)

 

良い彫刻が施されたインタリオには、上質な石が使われている事が多いです。質の悪い石に良い彫刻が刻まれた作品を見た場合、あるいは、上質な石に質の悪い彫刻が刻まれた作品を見た場合には特に注意してください !

 

結論

 

インタリオの魅力を出来るだけ詳しくご説明いたしました、上質な石で、魅力的なモチーフと高い彫刻技術で作られた本物のインタリオを完全な保存状態で見つけることがいかに難しいことであるかを分かって頂けたらと思います。

インタリオは数千年前から存在する素晴らしい宝物と言えます。どんな美術品よりも小さなインタリオが美術マーケットの動向とあいまって非常に価値を持った素晴らしいマスターピースとなる場合があるのです。何故なら素晴らしいマスターピースのインタリオの価格は今後上昇傾向にあるからです。

 

 

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